Bioneersからの学び(3)先住民とアクティビズム
(前回からの続きです)
Bioneersでは、地球環境、ジェンダー、先住民
アート、女性のリーダーシップ、エネルギー
食物、農、教育、テクノロジー、意識などなど
持続可能で平和な世界を創造していくための
さまざまなテーマがあったのですが、、、
今日はその中の一つ、私が昔から興味を持っている
ネイティブアメリカン(先住民)のことについて。
まずは、Bioneersの数カ月前から起こっていた
世界で注目を集めていたこちらのニュースから。
ノースダコタ州の、先住民スー族の暮らす
スタンディングロックという地における
先住民たちによる、歴史的に見ても最大級の
平和的な抗議運動について。
ここまでの経緯を大まかに説明すると、、、
スー族の居住地から少し離れた所にて
ある企業による石油のパイプラインが
通過する計画が決まりました。
このパイプライン、スー族の居住区は通らずとも
彼らが生きていく上で大切な水源である
ミズーリ川の水面下を、1kmほど上流で横切ることに。
問題は、パイプラインは小さな破裂が起こりやすく
原油が輸送中にパイプラインから漏れるというのは
これまでの統計からみても、必ず起こるということ。
注)この会社の原油漏れ事故は、分かっているだけでも
2010年から200件以上もあったそう!
さらに、パイプラインを地中に埋めて通すために
あたり一帯を掘り起こされてしまう、、、。
スー族にとってこの川は、命の水だし
この地は、古代からこれまでずっと
ご先祖たちも眠っている、神聖な場所。
500年以上に渡って、今でもこういう形で
尊厳を傷つけられている先住民の人たちが
体を張って命をかけて守ろうとしているのは
母なる地球と、子孫の命、民族の誇りや尊厳
そして、平和な暮らし。
500年以上、迫害され続けてきた先住民たちも
今回は、民族間の対立の壁すら超えて立ち上がり
水や地球、平和、そして先住民の権利を守るために
300以上もの他の部族がこの地に集まりました。
そして、大地や水が原油で汚染されるのを防ぐべく
彼らは、建設現場近くにテントやティピを張って
キャンプをしながら、武器は一切持たずに
平和の祈りや儀式と共に、建設の中止を訴え始めました。
合言葉は、「Water is life (水は命)」!
若者たちが声を大にしてメッセージを訴え
長老たちがそれを見守り、全体を導く。
物質主義に根ざした近代的なライフスタイルと
自然と調和した伝統的なライフスタイルの葛藤。
目先の利益を重視して地球を破壊する企業と
宇宙・地球的な時間軸で物事を捉える先住民。
冷酷な暴力で相手を迫害、抑圧する側と
スピリチュアルな祈りと非暴力を貫く側。
お金や権力が中心の価値観と
命や生態系が中心の価値観。
Bioneersにも、彼らの代表たちがきて
スタンディングロックの状況を訴えていました。
今回のBioneersのあと、スタンディングロックでは
さらに数百人もの人が不当に逮捕されたり
武装した警察や、企業側に雇われた警備員からの
放水車やゴム弾、催涙ガス、スタンガンなどを使った
残虐な暴力が振るわれ、多くの負傷者が出ました。
けれど、それでも非暴力の精神に則って
メッセージを訴え続ける先住民に胸を打たれ
各地から沢山の人達が応援に駆けつけます。
アクティビストやジャーナリストたち
アマゾンの先住民のリーダーたち
500人の様々な宗教の聖職者たちなども。
スタンディングロックの平和的抗議は
まだ始まったばかりです。
ネイティブ・アメリカンの文化には、古代から伝わる
沢山の神話や予言があるのですが、その中の一つ、
ラコタ族やホピ族に伝わる9つの予言のうちの
8つめの予言が、今まさに注目されています。
黒い蛇が川を渡り、私たちの土地に入ろうとする。
部族が団結して、それを退治しなければならない。
もし黒い蛇が川を渡ってしまったら
世界は大きな脅威の渦に陥るだろう。
今回の件で、先住民達はこのパイプラインこそが
まさに「黒い蛇」であると言っています。
また、別の言い伝えもあります。
地球が病んで、動物たちが姿を消しはじめる
まさにそのとき、この世界を救うために
「虹の戦士」たちがあらわれる。
ネイティブアメリカンが「戦士」と言うとき
それは、悪とみなした相手を攻撃する人ではなく
内なる欲望や執着などから自由になるために
戦う人のことのだそうです。
国籍を超えて、世界中の全ての人や動植物たちが
この地球上で平和に調和を保って暮らせるよう
誰かの命令ではなく、自らの意思で立ち上がる
虹の戦士たち。
「黒い蛇」と「虹の戦士たち」の関係は
これからどうなっていくのだろう、、、。
全ては繋がっているという感覚や
先祖たちから伝わる伝統的な知恵、そして
目には見えない存在(スピリットや祈りなど)を
大切にして生きる
先住民文化の根底には、地球と調和して生きるための
古代からのこういった教えがあるのですが
中でも、とりわけ特徴的な言葉がこちら。
7th Generation(セブンス・ジェネレーション)
「自分の行動が、7世代先の子孫の時代に
どう影響するか?」
これこそが、先住民のサステイナブルな哲学で
こういった大きな時間の捉え方を
「ディープタイム」と呼ぶそうです。
この「ディープタイム」の反対で、いわゆる
目先のことしか見ない狭い時間のとらえ方による
主な5つの弊害は、このようなものがあると言われています。
・短期的な利益が長期的なコストより重要視される
・大変な事態が起ころうとしているのが目に見えない
・時間を狭くとらえることでますます視野が狭まる
・問題が未来に先送りされる
・生きる意味や目的を感じにくくなる
(ジョアンナ・メイシー著「アクティブ・ホープ」より)
最近は、先住民のこの 7th Generationという哲学は
環境のことに限らず、全ての活動に通じるなぁと
思うようになりました。
特に、社会変革を目指して活動する際は
平和を実現させたいという思いが強くなると
何かと急いでしまいがち。
「平和のために相手と戦う」という危険な罠も
この「急ぐ意識」で視野が狭くなることで
起こるのかなぁ、とふと思ったりします。
もしかしたら、平和な世界の実現というのは
自分が死ぬまでには叶わないかもしれない、、、。
今この時代に起こっていることは一見
平和な世界の実現に逆行しているかのように
見えることも多くあります。
でも、ディープタイムを意識することで
それも必要なプロセスなんだろうと
受け入れることができる気がします。
宇宙の全プロセスを信頼して
今の自分ができることを、淡々と。
自分がこの世を去ったあとの世代のために
自分の責任を全うするという先住民の生き方を
とてもかっこいいと思うと同時に、自分も少しずつ
そういう生き方に近づきたいと思う、今日この頃です。